予算特別委員会で議員提案政策条例を検証する

新田知事

12月10日の予算特別委員会で質問した。今回は、これまで制定された10本の議員提案政策条例の内5本を取り上げ、これまでの成果と課題、今日的有効性、今後の施策展開等を問うた。その質問要旨を記す。

1)「都市との交流による農山漁村地域の活性化に関する条例」について

ア.「関係人口増加」「ワーケーションの推進」「多拠点居住の普及」といった今日的テーマに対する本条例の活用方針について、所見を問う。
⇒これらのテーマは農山漁村においても実現可能性が高く、条例の理念に合致しており、例えば、重点地域の指定制度の活用(条例第12条)により、意欲ある市町村において、強力に推進することもできると考える。

イ. 富山県指定・交流地域活性化センター(NPO法人グリーンツーリズムとやま)は、これまで、様々な事業を通して都市住民の田舎定住や関係人口増加等の実績を残し、多くのノウハウや人材ネットワークを蓄積してきており、民間活力の活用の観点からももっと活用すべきと考えるが、今後の方針について問う。
⇒例えば、とやま観光推進機構やふるさと回帰支援センター、地方創生局移住担当セクション等と横の連携を密にすれば、農山漁村において、移住、関係人口増加、ワーケーション等がもっと有機的に実現でき、また現在異なる部局で行われている類似の事業の効率化も図れると考える。子どもは山村留学、親はワーケーションのような部局をまたがる取組みを活性化センターが担うとよい

(2)「元気とやま観光振興条例」について

ア. 本条例に基づき、多岐にわたる観光施策が講じられてきたが、策定中の新たな観光振興戦略プランの重点テーマについて問う。
⇒新型コロナウイルス感染症発生前からの課題とコロナ禍を経験したことにより新たに認識した課題を整理して対策を講ずべきと考える。特に、サービスの高付加価値化が重要な柱となる。それが単価アップを通して、利益率を上げ、再投資や良き人材確保を可能とする。また、観光の他産業への経済波及効果による域内経済循環の促進も重要な観点である。

助野地方創生局長

イ. サイクルツーリズム推進の観点から、ナショナルサイクルルートに指定された「富山湾岸サイクリングコース」の走行環境や受入環境の一層の充実に取り組むべきと考えるが、取組方針を問う。
⇒路面標示や案内表示の一層の改善、入善町サイクリングロード等自転車専用道の更なる延長などの走行環境の整備充実、サイクルステーションの施設の一層の充実など、早期に進めるべき。

(3)「障害のある人の人権を尊重し県民皆が共にいきいきと輝く富山県づくり条例」について

ア. 本条例施行から5年半が経過した今、条例第3条に定める基本理念に照らし、現状をどう認識しているのか、問う。
⇒障害を理由とする差別を解消するための相談体制の拡充が図られ、また、差別事案の解決のための助言、あっせん手続きが整備されたが、このような相談体制や手続きの整備が、障害を理由とする差別の解消に当然に結びつくものではない。

木内厚生部長

イ. 障害者雇用率の向上に官民が連携して取り組み、まずは早急に現在の障害者の法定雇用率2.3%を達成し、更なる向上を図るべきと考えるが、障害者雇用率向上に向けた取組方針を問う。
⇒直近の厚生労働省のデータによると、富山県の民間企業の障害者雇用率は2.13%と、法定雇用率の2.2%、全国平均の2.15%を下回り、北信越5県では最下位であり、障害のある人にとってウェルビーイングの現状ではない。

ウ. 本条例は、県民の障害についての知識理解を深める必要性(第3条(5))や障害のある人とない人との交流の機会の提供の必要性(第22条)を定めているが、障害者を理解し、また障害者と交流する良き機会として、障害者芸術の一層の普及に努めるべきと考えるが、その取組方針を問う。
⇒障害のある人の描いた絵画等を観ると、その豊かな感性やとてつもない集中力に引き込まれる。県内各地で作品発表の場があり、多くの人に観てもらう機会があるとよい。

エ. 「新川こども屋内レクリエーション施設」の整備方針として、障害のある人との交流を通して障害への理解を深めることを明確にして、具体の整備に臨んでほしいと考えるが、所見を問う。
⇒条例第3条や第22条の具体化の2つ目として、是非とも、障害等の有無にかかわらず快適に遊べるインクルーシブな施設にしてほしい。安全管理を徹底したうえで、お互いに遊びを通してコミュニケーションを図り、理解し合い、社会性を身につける場にしてほしい。

(4)「富山県県産材利用促進条例」について

ア. 県は、本条例に基づき、平成29年度から令和3年度までを期間とする「県産材利用促進基本計画」を策定し、県産材の需要拡大と安定供給体制の整備を図ってきたが、これまでの成果について問う。

堀口農林水産部長

イ. 「県産材利用促進基本計画」の見直しにあたり、これまでの施策の評価や国の法改正の趣旨を踏まえることが重要であると考えるが、計画の見直しの基本的方針を問う。
⇒ 国は、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献することや、林業・木材産業の活性化を図るため、木材利用の対象を公共建築物から民間建築物を含めた建築物一般に拡大する法改正を行ったが、この法改正の趣旨も踏まえる必要がある。

(5)「富山県中山間地域における持続可能な地域社会の形成に関する条例」について

ア. 本条例に基づく「富山県中山間地域創生総合戦略」では、令和6年度までの県による話し合い支援地区数累計の目標を50地区としているが、現状と目標達成の見通しについて問う。
⇒集落に「変化」という化学反応を起こすには、集落の住民が将来課題を認識し地域の将来像について話し合うことが「変化」のはじまりであると考える。そのため、本年度、地域コンシェルジュの増員をしていただいた。

イ. デジタル技術を活用した中山間地域活性化について、令和4年度の取組方針及びデジタル田園都市国家構想への対応方針を問う。
⇒デジタル技術の活用は、中山間地域に「変化」をもたらすもう一つのツールである。岸田首相が打ち出した「デジタル田園都市国家構想」はまさに追い風であり、そのモデル地区を目指す意気込みが必要である。